東京高等裁判所 昭和51年(行コ)59号 判決
一 控訴人の本件却下処分の取消を求める訴は、法律上の利益を欠くといわなければならないが、その理由は、次に付加するほかは、原判決の理由に判示されているところと同一であるからこれを引用する。
特許法九八条一項は、特許権の放棄による消滅は登録しなければその効力を生じない旨規定しており、これによれば特許権の放棄による消滅の効力は登録によりその日から発生することが明らかであつて、控訴人の主張するように別異の解釈をとる余地は全くないといつてよい。
控訴人はこのように解するときは、本件特許権の出願公告は昭和四〇年二月一日になされているので、昭和五〇年二月二日以後まで権利が存続するときは、その分まで特許料を支払わなければならなくなるところ、本件特許権の一部放棄による抹消登録の申請は、昭和五〇年一月二〇日になされているにもかかわらず、その登録は同年四月二二日にされたから、一部放棄した分について抹消登録のときまでの特許料を余分に納付することを強要される不合理な結果が生ずると主張する。
なるほど特許権の一部放棄による消滅の効力は昭和五〇年四月二二日に生ずるから、同年二月二日から同日までの特許料はこれを納付する義務があるかのように見える。しかしながら、これを納付しないでおれば、特許法一一二条三項の規定によつてその特許権はその納付期限である同年二月一日にさかのぼつて消滅したものとみなされる。したがつて、同年二月二日から四月二二日までの特許料を納付する義務は生じないことになる。してみれば、特許権者は特許庁からその支払を強要されることもないわけであり、抹消登録が遅く行われたことによつてなんら不利益を被るおそれはないといわなければならない。
成立に争いのない甲第七号証によれば、控訴人は、本件特許権について一部放棄した分の一一年目の特許料(昭和五〇年二月二日以後の分)を納付していないことが認められ、控訴人が不当な不利益を被つていないことはこれによつて明らかである。
以上検討したところによれば、本件特許権の一部放棄した分の特許料の納付に関して、本件却下処分の取消を求める法律上の利益があるという控訴人の主張は理由がない。
二 そうすると控訴人の本件却下処分の取消を求める訴は法律上の利益がないので不適法として却下すべく、これと同趣旨の原判決は相当であるから、民事訴訟法三八四条により本件控訴を棄却する。